Faylay~しあわせの魔法

「アレクセイが憎かった」

「うん、分かるよ」

父さんと母さんを殺した人だから。

その言葉を呑みこみ、リディルは目を閉じる。そして、指輪の握られたフェイレイの手を、更に強く握り締めた。

リディルには、フェイレイの気持ちが誰よりもよく分かる。

大切な人を奪われたときの、途方もなく広がる憎しみの気持ち。

そして力を行使してしまった後の、後悔と懺悔の気持ちも。

「殺してやりたかった。だけど……あんな風に……あんな風に、するべきじゃなかったんだ」

声を詰まらせるフェイレイの気持ちが誰よりも分かるから、ただ頷いて寄り添う。

どんな言葉をかけてもその罪が消えるわけではなく、そして心が晴れるわけでもない。

けれどこうして寄り添ってくれる人がいるだけできっと、救われることもある。


床の上に落ちていく涙を静かに見守っていたリディルは、そっと後ろを振り返る。

まだ剣を構えたままの魔王は、苦虫を噛み潰したような顔で2人を見ていた。

「待っていろと、言っただろう」

リディルは小さく首を横に振った。

「アルトゥルス……もう、やめよう? もう、何の意味もないの。誰も戦うことを望んでいないの」

「人も精霊も『勇者』も……私は赦さないと言ったはずだ」

リディルはフェイレイから手を離し、立ち上がって魔王と向き直った。

「気持ちを偽ることは出来ない。だから、赦さなくてもいいの。だけどもう、誰も傷つかないで欲しいの。もう一度、私と一緒に行こう」

と、手を差し伸べる。