Faylay~しあわせの魔法

黒い渦の中に、今まで生きてきた記憶が溶け込み、グルグルと駆け巡る。

苦悶の表情を浮かべると、リディルの呼ぶ声が聞こえて、記憶の中の一欠けらが目の前に飛び込んできた。

それは、リディルがグリフィノー家に来てから一年半ほどした頃の記憶。

月がまだ空の天辺に輝く時分。大木の下で寄り添う幼いフェイレイとリディル。

小さな小指と小指を絡めて誓った言葉。

『リディルの“勇者”になって、ずっとずっと、護ってあげるからね──』

彼女がもう、ひとりで泣かないように、その心を護り続ける。

その約束を護るためにずっと生きてきた。

そしてこれからも、その約束を果たすために生きていく。

だからこんな力に呑みこまれるわけにはいかないのだ──。


ぽう、と暗闇の中に光が灯ったかと思ったら、急激に光が広がり、黒い濁流を外へ追いやった。

胸の内に渦巻いていた黒い感情が払拭されると、ランスとアリア、二人の笑顔が脳裏に浮かび、涙が零れた。

「……ごめん」

リディルの手の上から更に自分の手を重ね、それを額に当てた。

「ごめん、俺……」

「フェイ」

「俺……アレクセイを……」

「……うん」

どす黒い感情に自我を呑まれても、彼を殺したいと思い、切り刻んだのは自分自身だ。