Faylay~しあわせの魔法

暗闇の中、雨粒を受ける指輪たちは静かな輝きを放つ。

裏に掘り込まれた文字まではさすがに見えない。けれど、分かる。それが誰のものであるのかが。

生まれた時から無意識のうちに目にしてきたそれは、確かに両親のものだ。

「……どうして」

顔を強張らせたまま、フェイレイはアレクセイへ視線を投げた。

「これは父さんと母さんのだ」

「死体から抜き取りました」

あまりにもあっさりと言われ、フェイレイは言葉を失った。

「まさか」

アレクセイからまた指輪に目を戻し、呟く。

『必ず生きて戻れ』と言った母も、『母さんと一緒に待っている』と言った父も、現役の傭兵にも負けない強さを持つ人達だ。

それなのに……。

「あの方たちは私の真の目的を知ってしまった。だから邪魔だったのです」

そう言われても、まだフェイレイは信じがたい顔をしていた。

こんな指輪ひとつで、何の証拠になるというのか。アレクセイは嘘を言っているのではないのか──。

「嘘だ」

認めたくなくて首を横に振った。

「もっと証拠が必要ですか。戦艦から撮った記録もありますよ。ご覧になりますか?」

深海色の瞳を揺らしながら視線を向けてくるフェイレイに、アレクセイは最期の芝居を打つ。

「私としてはあまりお見せしたくはないのですよ。『セルティアの英雄』とまで呼ばれた方々が、泣いて命を乞うような無様な最期、ご子息にはとても……」

冷たい雨の中に、くつくつと愉しげに笑うアレクセイの声がまじる。