Faylay~しあわせの魔法

沈んでいく意識をどうすることも出来なくて、リディルはそれに抗うことを諦める。

「フェイ、ごめん、ね」

小さく呟く彼女に、フェイレイは優しく微笑みかける。

「違うだろ? こういうときは、“ありがとう”」

「……うん。ありが、……」

言葉の途中で、リディルはくたりと頭を垂れる。

「リディル」

焦燥に駆られるフェイレイに、アランの女王が語りかける。

《精霊士<マスター>が意識を手放した。わらわはもう留まることは出来ぬ。早々に逃げるが良いぞ》

キラキラとした結晶を残し、氷の女王は白い霧とともに消え失せた。

それとともにアランの力は失われ、辺りを覆う氷が急速に溶け始める。

「フェイレイさん」

ヴァンガードの不安そうな声が後ろから聞こえてきて、フェイレイは気合いを入れなおした。

「大丈夫だ」

ヴァンガードに言い聞かせ、そして自分にも言い聞かせてフェイレイは歩き続ける。

「……すみません」

負担ばかりかけている自分が悔しくて、ヴァンガードは俯いた。