Faylay~しあわせの魔法

「フェイ」

壮絶な光景に立ち尽くしていたフェイレイは、リディルの声でハッと我に返った。

「ヴァン、を」

「ああ!」

リディルは変わらず無表情だったが、声が苦しそうだった。精霊の女王を召還するなど聞いたことが無い。身体には相当負担がかかっていると思われた。

急いで崩れた岩盤の上を飛び越え、ヴァンガードの救出に向かう。

ヴァンガードは凍りついた岩の下にいるのに、その身体は僅かに寒さを感じているだけで、何かに護られているように光に包まれていた。

「ヴァン、よく頑張った! 大丈夫か!?」

「平気です」

顔を顰めながらも、そう応えるヴァンガード。

「さっきはありがとう。さすが天才だな!」

「そんなことは……」

口ごもる彼の頭をグリグリと撫で回してから、ヴァンガードの足の上にある岩に手をかける。

「これも、リディルさんの力なんですか」

全て氷で覆われてしまった坑道を見上げ、信じがたい思いでヴァンガードは訊く。

「ああ、多分なっ。俺も初めて見た!」

フェイレイは氷に包まれた岩を剣で細かく砕きながら答える。

「凄すぎる……」

フェイレイに身体を引きずり出されながら呟くヴァンガードは、悔しさに唇を噛んだ。