白いまどろみの中から目覚めたとき、フェイレイは大きく揺れる部屋の中にいた。

眩暈でも起こしているのだろうかと一瞬思ったが、身体全体にかかる重力の変化に、やはり部屋が揺れているのだと気づいた。

そして、魔族の気配。

フェイレイは飛び起きると、上下に揺れている見覚えのある狭い部屋の中にサッと視線を走らせた後、ドアを開けて勢い良く外へ飛び出していった。

木板の廊下を駆け抜けて、階段を上った先は船の甲板の上だ。

「そっち行ったぞぉ~!」

「魚雷打ち込めえええー!」

雨の降りしきる甲板の上を飛び交っている、雄々しい男たちの声を聞きながら視線を走らせると。

高くうねる波の上から降ってきた、魚のような鱗と鰭を持つ水棲魔族を刀や槍で斬り裂く海賊たちの姿があちこちにあった。

グラリと揺れる足元にふらつき、後ろの壁に手をやったところへ、水色の髪の少年が駆けてきた。

「フェイレイさん! 気がついたんですか!」

「……ヴァン」

頭からずぶ濡れの少年の手には、彼の愛用する魔銃が握られていた。

「これは……」

「今、皇都へ向かっています」

ヴァンガードはフェイレイの聞きたいことを的確に判断し、答えた。

「貴方が目覚めたらきっと、リディルさんを助けに行くと言うと思いましたので。でも、道のりは険しそうですよ。中央大陸の周りは魔族の巣窟です。もう3日、こんな感じですよ」

「3日!?」

「貴方も一週間、眠っていました」