世界の国々を滅ぼし、このアライエルまで侵攻してきた星府軍に対する民衆の信頼は地に落ちていた。

そしてそれは、惑星王を監禁し、その地位を狙っている星府軍元帥のせいであるという噂が流れ始めた。

このまま元帥を放っておいてもいいのか。

星府軍の好きにさせてもいいのか。

膨れ上がった民衆の想いはやがて各国の首脳へと伝わり、世界の国々の想いがひとつになり始めていた。

そして。

そこに彼は降りてきたのだ。

すべての武力が消え去った真っ白な空から、まるで何かに護られるように人々のもとへ舞い降りてくるその姿。

それはまるで、神から与えられた希望の光。

人にも、魔族にも、消えてしまった精霊にも怯えることなく、平和な自分たちの世界を取り戻してくれる、偉大なる神の使いがやってきたのだと。

そんな風に人々に思い込ませるには、十分すぎる光景だった。



この日からフェイレイ=グリフィノーは。

アライエルを、そして世界を護る『勇者』として、人々の前に君臨することとなる。



本当は。

フェイレイはただ。

たった一人の少女のために、戦っていたのだけれど。