Faylay~しあわせの魔法

大切な人を護るために。

ランスロットも、そしてアレクセイも、フェイレイのその想いにかけた。


もう一度、立ち上がれ──。




ゆらり、とフェイレイの周りの空気が揺らめいた。

上から降ってくる雨粒が、身体に触れることなく蒸発していく。

立ち上がる蒸気に引っ張られるように、フェイレイもゆっくりと立ち上がった。

大きく肩を揺らし、重そうに首をもたげると、射抜くようにアレクセイに視線をやった。

強い輝きを放つ深海色の瞳に、アレクセイはざわりと鳥肌を立てる。

きた。

そう、思った。


ドン、と空気が震え、フェイレイから覇気が飛び出す。放射状に広がったそれは、雨粒さえ凶器に変えてアレクセイに襲い掛かってきた。

幾粒もの雨を薙ぎ払いながら、アレクセイは期待に胸を打ち振るわせた。

ビリビリと肌に突き刺さる、異常なまでに研ぎ澄まされた覇気は、気を抜けば意識を失いそうになるくらいの波動で襲い掛かってくる。

それはもはや、人の領域を超えていた。

今の彼なら越えられる。人智を超えた力を持つ、魔王に匹敵する力を手に入れられる──。

黒衣の下に隠したペンダント、その先についているふたつの指輪を握り締め、アレクセイは最期の賭けに出ようとした。


彼に、“怒り”という名の力を、与えようとした。