Faylay~しあわせの魔法

『アレクセイ』

突然、脳内に魔王の声が響き渡った。

『何をしている。その男は、直接お前が手を下せ』

アレクセイは空を振り仰いだ。

稲光る暗雲の下に、微かに影が見える。

宙を素早く滑空するあれは、セルティアも襲ったリンドブルムだ。あれを介して魔王は2人の戦いの行方を見ている。

アレクセイは小さく呻き声を上げるフェイレイに視線を落とした。この状況では──仕方ない。

「承知しました」

フェイレイを少し離れたところまで投げ捨てると、再び剣を構えた。

「う……」

フェイレイはなんとか応戦しようとするが、身体に力が入らなかった。

(このまま、やられるわけには……)

視界が霞み、意識が朦朧としている。身体を起こそうとする手はブルブルと震えた。

「もう少し、楽しませて欲しかったのですが、残念です」

アレクセイの静かな声が、ザアザアと降りしきる雨に混じり、やけに静かに響いてきた。

「このまま眠りますか。それとも……まだ立って、皇女殿下をお護りしますか」

ピクリ、とフェイレイの指先が動いた。

「リディル……」


『フェイレイ』

頭の中に声が響く。

ランスロットの穏やかな声が。

『立つんだ。あの子を護るんだろう……?』