Faylay~しあわせの魔法

『貴方も魔王に操られているのね? 貴方はそんな人ではないもの!』

「私が操られているのかどうか、お前なら分かるんじゃないのか、ローズ」

『──!』

ローズマリーはグッと言葉を呑み込んだ。

「幼馴染のよしみで逃がしてやったというのにな……仕方ない。お前にも、消えてもらわなければ」

『アレク!』

「お前も、私の邪魔をするのだろう?」

見たこともないような冷笑を向けられ、ローズマリーは思わず固まった。

彼がカインを欺いて、覇王になろうとしていることなど在り得なかった。そんなことをするような人物ではないことは、彼女が一番知っていた。

けれど、向けられる漆黒の瞳は揺らぐことなく、ローズマリーを射抜いてくる。

覇王となることを宣言するような、強い瞳で。

「主砲、発射用意。周りの飛行艇も撃ち落せ」

「しかし元帥!」

「逆らえば……斬るぞ」

低い声を放つアレクセイに、兵たちは逆らうことなど微塵も考えられなくなる。漆黒の瞳は、それだけの威圧感を放っていた。

『アレクセイっ!』

「話は終わりだ」

ブツリと通信を切ると、モニターからローズマリーの顔が消え、ヴァルトの美しい街並みが広がった。

それを眺める間もなく、声が上がる。

「敵機、急接近!」