Faylay~しあわせの魔法

確かに、平時であればフェイレイも是非もう一度刃を交えてみたい。

ユージンの動きは独特で、まるで別の生き物のようにしなやかだった。あの動きをもう一度見て、自分のものにしたいところだが……。

「すみません、俺たち、もう行かないといけないんです」

残念だが、早くここを出て皇都へ向かわなくてはならなかった。

「父上には会わなくても良いのか?」

「本当はそうするつもりでしたけれど……急に行く場所が出来まして。あまり長居は出来ないのです。魔王のことやこの国の歴史については、姫の方からアライエル王にお伝えしていただけると有難いのですが」

ローズマリーが横からそう説明した。

「それは構わぬが……」

イライザ姫が残念そうにそう言ったところで、通信機がけたたましく鳴り出した。

通常であればピピピ、と静かに響く電子音が、今は危険を知らせる警告音となって響いていた。

この音が鳴るのは、オースター島の早朝、戦艦ティル・ジーアがやってきたとき以来だ。

「なんだ?」

イライザ姫とユージンが目を丸くするのを尻目に、フェイレイは慌てて通信機を耳に当てた。

『星府軍のティル・ジーアがそっちに向かったぞ! お前さんたち、今どこにいる!?』

「……まだ王城だ」

フェイレイは顔を強張らせた。

今戦艦がこの都に入れば、皇女殿下を匿ったとして、それを口実にヴァルトが戦火に飲まれるかもしれない。

『それなら早く港へ! 船をつけておいた!』