Faylay~しあわせの魔法

「王様、帰ってきたかな」

そう言いながら、荷物を持って部屋を出て行く。その姿を後ろから、ランスロットが静かに見守っていた。

青い瞳を細め、それから窓の外へ目を向ける。

激しく雨を降らす暗雲の向こうから──凄まじい兵力が向かってきているのが見えた。

小さな街ならすっぽりと覆い尽くされてしまうような、巨大な黒い飛行物体。

「……フェイレイ、正念場だよ」

そう呟くと、小さな光へと姿を変え、廊下を小走りに駆けていくフェイレイの背中へ飛び込んだ。




全員が荷物を持って応接室に集合したところに、イライザ姫がやってきた。その後ろには、騎士のユージンもいる。

「ああ姫、今お伺いしようとしていたところですわ」

ローズマリーが笑顔で出迎える。

「そなた、具合が悪いと言っていただろう。だから見舞いにな」

イライザ姫は後ろからついてきた侍女たちに、華やかな花束をいくつもと、ほどよく熟して甘い香りを放つフルーツの入った大きな籠を持ってこさせた。

「まあ、わざわざありがとうございます。この通り、すっかり元気ですのよ」

「それは良かった」

イライザ姫は微笑み、青いビロードの椅子に腰掛けた。

「父上の帰還が少し遅れているのだ。この雨なのでな、飛行艇がうまく飛べんらしい」

「そうですか。心配ですね……」

「まあ、雨が止めば大丈夫だろう。その間に、ユージンが是非もう一度『勇者』と手合わせしたいと申しておってな」

「俺とですか?」

フェイレイは茶色の髪の、爽やかな笑みを浮かべる青年に視線をやった。

「騎士の宿舎では貴方の噂で持ちきりなのですよ。もしよろしければお願いしたい」