Faylay~しあわせの魔法

「貴女、フェイレイくんの気持ちには気づいているのでしょう?」

「そ、それは……」

「与えられる愛に甘えてばかりでは……手に入るものも逃げていきますよ」

ローズマリーの表情が、少しだけ翳った。

「その気持ちに気づいてはいても、言葉にし、態度に表さなければ、愛されていることを実感出来ないものなのです。だって、人の心を覗き見ることなど出来ないのですから」

艶やかな桃色の口紅を筆に取り、リディルの小さな唇に乗せてやる。

「……愛されるおまじないですわ。大切な人にこそ、言葉で伝えなさい」

にこりと微笑み、大きな手鏡をリディルの前に差し出す。

「大丈夫。今日の貴女は、世界一かわいらしいですから。頑張って」

ローズマリーの言葉に、侍女たちも笑顔で頷く。

鏡の中に映った、少しだけ大人びた自分の顔に目をパチクリさせてから、周りを見渡す。みんな優しい笑顔でリディルを見守っていた。

もう一度鏡に視線を落とし、自分に問いかける。

──頑張れる?

「……頑張る」

リディルは小さく頷いて、立ち上がった。

「それでは行ってらっしゃい」

「……ローズさんは?」

リディルばかりでなく、侍女たちも不思議そうに首を傾げる。

ローズマリーはリディルの耳元へ口を寄せた。

「私、ここの第一王女には会ったことがありますの。だから、ここで待っています」

「そう……なの」

リディルは何だか急に不安になってきた。突っぱねはしても、心のどこかでローズマリーを頼りにしているのだ。