楽しそうに化粧を施していくローズマリーに、リディルは軽く溜息をつく。
「……楽しいですか」
「ええ、とっても」
ローズマリーはにこりと微笑む。
「だって、何事もなければ……もっと早くに貴女とこうしていられたのかもしれないのですものね」
そう語りかける、ローズマリーの表情は柔らかい。
「私ね、五人兄弟の末っ子ですのよ。兄ばかりのね。お蔭様で雄々しく育ちましたわ」
なるほど、とリディルは納得する。
「だから嬉しいのです。女の子の兄弟、しかも妹。ずっと憧れでしたのよ。一緒にお買い物に行ったり、好きな人のことを語り合ったり。……あの人から貴女のお話を聞いた時、心が躍りましたのよ。……無事でいて欲しいものだと、思っていました」
頬の上で動かしていたブラシを止め、赤い瞳を細めてそう話すローズマリーに、リディルはどこか後ろめたい気持ちになった。
兄であるカインのことを忘れているためか、その妻であるローズマリーに対しても、何の感情も見出せない。
記憶が失われていなければ、彼女の存在を受け入れ、喜んでいたのだろうか。
それとも、兄を慕っていたという自分は、大切な人を取られたと、ヤキモチでも妬いていたのだろうか。
今のリディルには、それすら分からない。
「あの……」
夫を魔王に乗っ取られ、きっと心を痛めているに違いない彼女には、なんと声をかけたら良いのか分からない。
けれど、気丈にもこうして自分を気遣ってくれていることに対しての礼くらいなら、自分にも言える……と、口を開きかけた。
「……楽しいですか」
「ええ、とっても」
ローズマリーはにこりと微笑む。
「だって、何事もなければ……もっと早くに貴女とこうしていられたのかもしれないのですものね」
そう語りかける、ローズマリーの表情は柔らかい。
「私ね、五人兄弟の末っ子ですのよ。兄ばかりのね。お蔭様で雄々しく育ちましたわ」
なるほど、とリディルは納得する。
「だから嬉しいのです。女の子の兄弟、しかも妹。ずっと憧れでしたのよ。一緒にお買い物に行ったり、好きな人のことを語り合ったり。……あの人から貴女のお話を聞いた時、心が躍りましたのよ。……無事でいて欲しいものだと、思っていました」
頬の上で動かしていたブラシを止め、赤い瞳を細めてそう話すローズマリーに、リディルはどこか後ろめたい気持ちになった。
兄であるカインのことを忘れているためか、その妻であるローズマリーに対しても、何の感情も見出せない。
記憶が失われていなければ、彼女の存在を受け入れ、喜んでいたのだろうか。
それとも、兄を慕っていたという自分は、大切な人を取られたと、ヤキモチでも妬いていたのだろうか。
今のリディルには、それすら分からない。
「あの……」
夫を魔王に乗っ取られ、きっと心を痛めているに違いない彼女には、なんと声をかけたら良いのか分からない。
けれど、気丈にもこうして自分を気遣ってくれていることに対しての礼くらいなら、自分にも言える……と、口を開きかけた。


