岩盤の崩落が落ち着いてくると、ヴァンガードは足の痛みに呻き声を上げた。身動きが取れずどうなってきるのかは確認出来ないが、恐らく岩に挟まれてしまっている。

「フェ、フェイレイ、さん」

擦れた小さな声で呼ぶと、頭上の岩がガラガラと崩れてティナたちの炎の灯りが差し込んできた。

見上げると、フェイレイはすぐ近くにいて……どうやら、ヴァンガードの頭を護ってくれていたようだった。

「ヴァン、大丈夫か? 怪我は!」

「……すみません、足を、挟まれました……」

「足? 待ってろ」

フェイレイがヴァンガードの足を覗きこもうとすると、オオオオ、とドラゴンが咆哮を上げた。

ドン、と音がして、パラパラと小石が上から降ってくる。

「フェイレイさん、僕は駄目です。逃げてください」

フェイレイはその言葉に目を見開いた。

「まったく役に立たなくてすみません。……こんな役立たず、置いていってくださって結構ですから。ドラゴンに襲われて死んだというなら、あの人たちもきっと、納得して……」

ヴァンガードが言い終わる前に、フェイレイは立ち上がった。そしてドラゴンを振り返り、剣を引き抜く。

「フェイレイさん!」

戦う気なのかと、声を張り上げる。

すると、フェイレイはドラゴンを見据えたまま言った。

「お前は何があっても無事に帰す。そう約束しただろ?」

と、肩越しに振り返る。

ティナの赤い光に照らされた彼の横顔は、はっとするほど優しく微笑んでいた。