「フェイレイくん、何してますのー。姫をお待たせしては……」

そう声をかけながら開いたままのドアから顔を出したローズマリーは、ハッとして口元を押さえた。

部屋の中にいる2人は、ベッドの端と端に、不自然に背を向けて座っていた。

明らかに何かありました、と言っているその光景に──。

「わ、私としたことがっ……」

ローズマリーはよろよろとドアにもたれ掛かった。

「ごめんなさい、お若い2人の邪魔をしてしまって! なんて気が利かないのかしらあぁ~!」

と、片手で顔を覆い嘆く彼女に、フェイレイは首を振った。

「いや、違! あの、何にもないから!」

「まあ……」

ローズマリーはチラリとフェイレイの顔を見て。

「そんな真っ赤な顔で言われても、あまり説得力はありませんけれど」

「えっ」

フェイレイは顔を両手で挟み込んだ。ローズマリーに背を向けているリディルも、同様に頬を覆う。

2人のかわいらしい反応に、ローズマリーはますます妖しい笑みを浮かべる。

「いいのよ、気にせず続けて頂戴。イライザ姫にはうまいこと言っておきますからね」

「いや、すぐ行くから!」

「えーと……あまり姫をお待たせせずに……ああして、こうして、とりゃ、っと……ほわほわ~……」

ローズマリーは意味不明な言葉を羅列したあと、真面目な顔でピースサインを作った。

「今の状況を色々考慮した上で、二時間でどうかしら」

何を言われているのか分からなくて、しばらく首を傾げていたフェイレイは。

「真面目な顔して何言ってんですか──!!」

ようやく彼女の言わんとすることの意味を理解し、そう怒鳴りつけた。