フェイ、どうしたんだろう。

頭の中でそう疑問に思う、冷静な自分がいた。

いつも笑顔を絶やさず、たとえ深刻な顔をしていても、傍にいてくれるだけで周りに安心感を与える人なのに。

今は、痛い。

傍にいると、胸が痛む。

(あのときと、同じ)

エスティーナの青い海の見える丘の上で。

シルバーリングを嵌めた小指を絡めて、ギュッと抱きしめられたときの彼と。

(また、苦しめてる)

ごめんね、と心の中で謝る。

きっとまた、自分のことで何かあったんだとリディルは感じていた。

優しい彼は、他人のことを自分のことのように思って悩み、苦しみ、痛みを分かち合おうとする。

それと同じことが、出来ればいいのに。

貴方の背負う苦しみを、半分に出来たらいいのに。


そっ、と触れただけの唇が離されて、リディルはそれを追いかけた。少しでも痛みを和らげたいという想いが、勝手に身体を動かした。

再び触れる唇に、フェイレイは少しだけ驚く。

そしてまたすぐに離れ、至近距離から見詰め合った後。

三度交わされる口付けは、引き寄せられるように、互いから。


ずっと傍にいる。

キミが、

貴方が、

誰よりも大切だから──。