Faylay~しあわせの魔法

子どもの頃から憧れ続けた勇者が今、目の前に。

フェイレイは思わず「サインください」と言いそうになった。が、なんとかそれを堪え、千年前に存在していた彼が何故目の前にいるのか、訊ねてみた。

「勇者が、なんでここに……」

「うーん、何故だろうね。良く分からないんだけれど……君がここを訪れてくれたことで、君の中に眠っていた『私』が目覚めた……ということだろうと思う。君の中には、私と同じ血が流れているから」

「……俺、本当に勇者の子孫なの?」

「そうだよ。私には分かる」

勇者にそう断言された。

いよいよ夢物語は現実となってフェイレイの中に刻み込まれ、沸々と嬉しさが込み上げて来た。

「そうなんだ……。ホントに、勇者の子孫なんだ……」

「うん」

ランスロットはにこりと微笑んだ。

「君は『私』……つまり、眠っている力を求めているように感じた。……私の力が必要な事態になっている……んだね?」

「……そうだ。惑星王が、魔王に乗っ取られて……」

フェイレイは掻い摘んで、今までの経緯を説明した。

「うん……なんとなく見えるよ。私の血を受け継ぐ者達が見てきた景色が。そうか、魔王が復活してしまったのか……」

ランスロットは辛そうに眉を顰めた。

「復活ってことは……今まで魔王はいなかったってことなのか?」

「彼は世界を壊そうとしていた。だから私が倒した……はずだったんだ。そのとき、精霊王も私も、一緒に滅んだはずだよ……」

「え……精霊王もいないのか?」

「そのはずだ。……そう、今は人が召喚しなければ精霊は力を発揮出来なくなっているね? それは精霊王がいないからだ。昔はそうではなかった。精霊は自分の意思で力を行使出来ていたんだ。けれど、千年前に魔王を倒すために力を使いすぎて……女王も、小さな精霊たちも、人の力を借りなければならないほど弱ってしまっているんだね」

「そう、だったのか……」

今まで当たり前だと思っていたことには、そんな理由があったのかと、目から鱗が落ちるようだった。