Faylay~しあわせの魔法

フェイレイが頷いたのを見て、リディルは部屋を出て行こうとする。

(あれ、今、もしかして、物凄くチャンス?)

と、引き止めるために手を伸ばす。

しかし。

(雰囲気も大事! 雰囲気も!)

と、伸ばしかけた手を引き戻す。

パタン、と扉が閉められて、はーっと息を吐き出すと。

「何してるんだい。引き止めてここで話でもすれば良かったじゃないか」

真後ろから、そんな声が聞こえてきた。

振り返った先には、ベッドに胡坐をかいて座る白い甲冑の金髪青年が、やはり穏やかな笑みを湛えてフェイレイを見ていた。

「うわああああ~!」

気のせいではなかった。

フェイレイは再び大声を上げたが、誰も部屋に飛び込んでくる者はいなかった。

「あ、あんた、誰!?」

勇者の像の前で見たときと同じ、彼からはまったく気配を感じなかった。そう、“生きている者”の気配が。

「私はランスロット。遥か昔、この国の騎士団長を務めていた者だ」

何だか父のような名前だな、と思いながらも、ランスロットの言葉を頭の中で反芻してみた。

遥か昔、この国の騎士団長だった。……先程、勇者の像の前に、佇んでいた。

そこから導き出される答えは。

「……あんた、『勇者』……?」

「ハハ、後世の人達には、そう呼ばれているみたいだね」

ランスロットは軽く笑いながら、そう答えた。