Faylay~しあわせの魔法

「どうしましたっ!」

ヴァンガードは魔銃を構えながら、ローズマリーはグローブを嵌めながら、リディルもいつでも精霊を召喚出来る心構えでフェイレイの部屋に飛び込んだ。

しかし、フェイレイはベッドに足を投げ出して転がっているだけで、特に変わったところは見受けられなかった。

「……どうしたの?」

寝転ぶフェイレイに近づき、リディルが顔を覗き込む。

「いや、あの……」

フェイレイは辺りに視線を走らせたが、青年の姿はどこにもない。

「あれー?」

起き上がって辺りを見回してみるも、あの白い甲冑は影も形もなくなっていた。

「おかしいな……」

首を傾げ、部屋に飛び込んできた面々を眺める。

「……ごめん、気のせい、みたい」

「何が気のせいなのかは分かりませんが」

ハア~、とヴァンガードは溜息をつきながら、構えた魔銃を下ろす。

「貴方の大声は、心臓に悪いです」

「ごめん」

「何はともあれ、何事もなくて良かったですわ」

ローズマリーもほっとしたような顔をし、ヴァンガードを促して部屋を出て行く。

「大丈夫?」

リディルはフェイレイを見下ろし、心配そうに眉を顰めた。

「うん、大丈夫」

「そう? ……何かあったら、言ってね。さっきの応接室で、みんなお茶飲んでるから」

「あ、そうなんだ。うん、分かった」