Faylay~しあわせの魔法

ガバ、とベッドから起き上がる。

「こんなことしてる場合じゃない」

魔族に襲われかけたとはいえ、アライエルギルドの傭兵たちに護られているこの国は、他のどの場所よりも安全といえた。

今を逃したら、それこそ言う機会がなくなる。言ってこなくては。……と、ベッドから下りかけて、ふと思いとどまる。

「いや、待て、落ち着け。こんなに慌てて言うもんじゃないぞ」

深呼吸をひとつし、気持ちを落ち着ける。

それから赤い髪に手を突っ込み、目を閉じながら唸る。

「ストレートに一言、どーんと言うべきか? それとも、長々と気持ちを伝えるべきか? ……ああ、どうしよう。考えてみたら俺、初めてだな、告白なんて。どうすりゃいいんだ」

彼にとっての初恋はリディルであり、他の女子になど目もくれずにそのまま成長してきたのだ。もちろん告白も初めてのことだ。

話には色々と聞いてはいるが、いざ自分が、となると、どうしたら良いのか分からなくなるものである。

「ううーん……雰囲気も大事かなぁ……」

ギルドにいた年上の友人たちの話を色々と思い出し、頭を抱えていると。

「そうだね。雰囲気は大切だよ。女性はそういうの、こだわるからね」

柔らかな低い声が、頭上から降ってきた。

「そうか、やっぱりそうだよな」

そう頷いてから、はたと気づいた。

「え?」

この部屋にはフェイレイ一人しかいなかったはずである。

いつの間に誰か入ってきたのか──と顔を上げると、白い甲冑の金髪の青年が、優しい微笑みを湛えてフェイレイを見下ろしていた。

たっぷりと青年を凝視したフェイレイは。

「だあああああああ!?」

思い切り、声を上げて仰け反った。