Faylay~しあわせの魔法

青空はすっかり灰色の雲に覆われてしまい、城に戻ってすぐ、ポツポツと雨が降り出した。

薄い青空に映えていた白い雪を冠する青い稜線は、すっかり雨に煙ってしまった。

「アライエルの山、青くて綺麗なのになぁ~」

窓を叩く雨音に、フェイレイは残念そうに溜息をついた。

訪れた日に雨とは、ついていない。


イライザの侍女たちに用意してもらった部屋は、城の東側にある離宮にあった。

最初に通された応接室は青を基調とした装飾品で飾られ、くつろぎのスペースが広がっている。

その奥の廊下に、ひとりずつ休めるベッドルームの扉がいくつも並んでいた。

その部屋の一室に一旦腰を落ち着けてみたが、あまりにも広すぎるので、どうにもこうにも落ち着かない。

そわそわしながらも疲れた身体を少しでも癒そうと、三回はゴロゴロ転がれそうな広いベッドに横になる。

藍の天蓋をジッと眺め、アライエルは青が多いな、とぼんやりと考えた。

山も青いし、城の屋根も、内部装飾も青い。兵士たちの甲冑も青だった。

そういえばセルティアは緑が多かった。森ばかりが広がっているからだろうか。国によって色が決められているのかもしれない。

でも先程見た『勇者』らしき人物は、白い甲冑を纏っていた。

「……勇者だからかな?」

自分の思考にそう質問してみるも、回答が得られるわけでもなく、ただ雨音が静かに耳に届くだけだ。

「……まあいいや。アライエル王に会ったら、もっと詳しく聞いてみよう」

そして魔族との戦闘の経緯や彼らの目的、魔王の存在、この国の過去、それらを踏まえたうえでの対応……色々と、聞かねばならないことはたくさんある。

それらは全て、明日になってから。

それまでにすることといえば……。