Faylay~しあわせの魔法

「凌いだとはいえ、魔族に襲われた城下が心配なのでな。こんな夜中の移動ですまないが、城に着いたらゆっくりするが良い」

「城……」

フェイレイはアライエルの王城と聞き、パッと顔を輝かせた。

「そうか、勇者のいた城だ!」

「勇者? ああ、確かに我が国の騎士団長を務めていたという記録はあるが」

「うわああ、ホントなんだ! 勇者、いたんだ! 銅像とかあったりするのか!?」

「あるぞ」

「見せてくれ!」

「良いぞ」

「やったああ~! 勇者の生まれ故郷! 勇者の勤めていた城! そこに行けるなんて思ってなかった。嬉しいなー!」

握りこぶしを作って大はしゃぎのフェイレイに、仲間たちは苦笑する。……真夜中だというのに、煩い。

「生まれ故郷? 違うぞ」

フェイレイの騒ぎようにもまったく動じないイライザは、至って落ち着いた声で言った。

「え、違う?」

「ああ。確かに勇者は我が国の騎士を務めていたが、出身は東だ。今のセルティア辺りだと聞いているが」

イライザの言葉に、仲間たち全員が目を丸くした。

一瞬の静けさの後、

「ええええええええ!!」

客車が吹き飛びそうなほどのフェイレイの大声が響き渡った。