Faylay~しあわせの魔法

何と返事をするべきか迷っていると、執事が細面の顔を柔和に微笑ませた。

ピンと背筋を伸ばしてゆっくりとこちらに歩いてくる。

何だろう、と少しばかり戸惑っていると。

一瞬、殺気を感じた。

そこからの動きは早い。

どこから抜いたのか、執事の手にはいつの間にか短剣が握られていて、目にも止まらぬ速さでフェイレイの胸を狙ってきた。

それを下から払い上げ、手首を掴む。

執事の手から離れた短剣は、フェイレイの左脇を転がるように床へ落ちていく。

くるりと一回転していく剣の感触を感じながら、執事の頬が軽く膨れたのを見逃さなかった。

反射的に口元を手で押さえつけ、そのまま仰向けに押し倒す。

執事の頭が床につく寸前、フェイレイの掴んでいた執事の手首がぐい、と外され、彼はひらりと身を捻ってバック転した。

カラン、と短剣が床に落ちる音を聞きながら、崩された体勢を瞬時に整える。

着地した執事は、薄い笑みを浮かべながらゴムのように床を跳ね返り、更に短剣を引き抜いた。

フェイレイの持つような長剣は、両手を広げるだけで精一杯の狭い廊下では抜けない。

普通ならば。

彼は体を斜めにして後ろから剣を抜き放ち、完全に変形させて執事の短剣を受け止めた。壁や窓、ドアにもその切っ先を掠めることなく。

「……お見事でございます」

執事は柔らかく微笑み、一歩後退した。短剣をどこかへ素早く消してしまうと、深々と頭を下げた。