Faylay~しあわせの魔法

踊りながら客たち一人一人の前に下りていったミンミンたちは、小さな手を差し出し、そこに一輪の花を出現させた。

魔法のようなショーに、客たちは歓声をあげ、拍手が巻き起こった。

シルヴァや執事の前にも同様に、一輪の花を差し出し、にこりと微笑むミンミンがいる。

「……フン」

シルヴァは不快そうに眉を顰めながらも、ミンミンの差し出す黄色い花を掴み取ると、さっとその場を立ち去った。

執事は青い花を受け取り、ミンミンとフェイレイにペコリと頭を下げ、シルヴァの後を追っていった。


花の精霊たちは消えたが、花びらが舞い散った食堂には明るい笑顔が残された。

その合間を縫って、ヴァンガードがフェイレイに近づく。

「フェイレイさん!」

ぐい、と手を引っ張り、食堂を出る。

「貴方、分かってるんですか? 今目立つのはマズイんです! どこに星府軍が潜んでいるか分からないんですからね!」

「だって……」

「だってじゃありませんよ! 自分の置かれている現状を考えてください。僕たちはリディルさんやローズさんをお護りしているんですからね。彼女たちを危険に晒さないようにしなくてはいけないんですよ!」

「……はい」

「それに、ああいうプライドの高そうな人に意見するときは、あんな大勢の人の前で怒鳴っちゃ駄目ですよ。余計に神経逆撫でするだけですから! 後でこっそり、あの執事さんを介して注意するとかしてください。いいですね!」

「……はい」

フェイレイは大人しく頷いた。

ヴァンガードの言う通りだった。

本当に、どちらが年上だか分からない。