「誘拐事件って……何者の仕業だろうな」
テーブルに肘をつき、フェイレイが呟く。
「盗賊とかかな」
「人型の魔族、ということも考えられますわ」
「だったら俺たちでやっつけられるんじゃないか?」
フェイレイがそんなことを言い出したとき。
例の派手なドレスを着た少女が、大声を張り上げた。
「無礼者、私を誰だと思っておる! 公爵家のシルヴァ=ブランデルであるぞ。お前のような下々の者に、そのようなことを言われる筋合いはないわ!」
バン、とテーブルを叩き、そう怒鳴りつける公爵家令嬢に、宿の主人はすっかり縮こまってしまった。
「誘拐? 神隠し? 誇り高き公爵家の娘である私が、そのようなものを恐れるものか。この、シルヴァ=ブランデルが!」
「申し訳ありません、出すぎたことを申しました……」
あまりの剣幕に、宿の主人は宿深く一礼すると、肩を落とした様子で食堂を出て行った。
それを目で追って、フェイレイは立ち上がる。
「ちょっとあんた!」
シルヴァに向かって目を吊り上げながらずんずん近づいていくと、執事らしき男が慌てたように立ち上がった。
それを押しのけて、シルヴァを見下ろす。
「なんだ、貴様は」
シルヴァは薄い青の瞳を細め、フェイレイを見上げる。
「俺はフェイレイ。あの人はあんたのことを心配して忠告してくれてんのに、そういう言い方はないんじゃないの?」
テーブルに肘をつき、フェイレイが呟く。
「盗賊とかかな」
「人型の魔族、ということも考えられますわ」
「だったら俺たちでやっつけられるんじゃないか?」
フェイレイがそんなことを言い出したとき。
例の派手なドレスを着た少女が、大声を張り上げた。
「無礼者、私を誰だと思っておる! 公爵家のシルヴァ=ブランデルであるぞ。お前のような下々の者に、そのようなことを言われる筋合いはないわ!」
バン、とテーブルを叩き、そう怒鳴りつける公爵家令嬢に、宿の主人はすっかり縮こまってしまった。
「誘拐? 神隠し? 誇り高き公爵家の娘である私が、そのようなものを恐れるものか。この、シルヴァ=ブランデルが!」
「申し訳ありません、出すぎたことを申しました……」
あまりの剣幕に、宿の主人は宿深く一礼すると、肩を落とした様子で食堂を出て行った。
それを目で追って、フェイレイは立ち上がる。
「ちょっとあんた!」
シルヴァに向かって目を吊り上げながらずんずん近づいていくと、執事らしき男が慌てたように立ち上がった。
それを押しのけて、シルヴァを見下ろす。
「なんだ、貴様は」
シルヴァは薄い青の瞳を細め、フェイレイを見上げる。
「俺はフェイレイ。あの人はあんたのことを心配して忠告してくれてんのに、そういう言い方はないんじゃないの?」


