街道からかなりはずれた奥の林までやってきたローズマリーは、ここがいい、と足を止めた。

人が歩く隙間があるだけの、かなり鬱蒼と生い茂った木々の間に立たされる。

「こういう場所、剣で戦うには不利ですわね」

「まあ、そうだね」

全部薙ぎ払えば問題はないが、などと考えていると、ローズマリーはにっこりと微笑んだ。

「今日はここで戦います。でも、ひとつ条件があります。周りの木を、一切傷つけてはいけません」

「ええ!?」

「もちろん、“覇気”で傷つけてもいけませんよ。木の葉一枚、許しません」

「そんな無茶な」

「私だけを狙ってきなさい。いいですね」

全部を避けて、剣でも、身体から放たれる気で傷つけてもいけないなどと。

「無茶だよ」

言いながら、剣を引き抜く。

「やる気はありますのね」

「うん。俺、ローズさんに勝たないといけないんだ」

「あら、何か理由でも?」

「うん。だって『勇者』が誰かより弱いなんて、カッコ悪いだろ。だから、ちゃんとローズさんに勝って……自信つけて、言うんだ」

「何を?」

ローズマリーの問いに、フェイレイはにやりと笑みを浮かべながら、堂々と宣言してやった。

そうしたら彼女は笑って、

「青少年らしい、不純な動機ですこと」

コロコロと笑い、ではしっかり頑張りなさい、と言ってから、フェイレイに向かって突進してきた。