エスティーナ町長の話によると、この町の主要産業である鉱石を掘り出す坑道で、行方不明者が続出しているのだという。

町で調査隊を結成してみたところ、ほぼ全滅。

そのうちの一人だけ、大怪我をして命からがら逃げ帰ってきたのだが、彼が言うには、

「みんな、恐ろしい何かに呑みこまれた」

──らしい。

あまりの恐怖で記憶が曖昧になっているようで、その恐ろしいもの何なのか、はっきりとしない。

けれども、それは魔族なのではないかという声が上がり、ギルドに依頼がきたというわけだ。


「その恐ろしいものってなんだろうな?」

坑道までの道案内をしてくれるガイドを振り返るフェイレイ。

「それが、我々もよく分からないのです。何も分からないものを、町民に報せて悪戯に恐怖心を煽っても……と、事件は公表していないのですが」

「それで町の人達は変わらず生活を送っているのですね」

何か事件が起きているにも関わらず、明るい表情のエスティーナ町民の姿を思い出し、ヴァンガードは納得する。

「でも、いつかは事件の内容は知れる」

リディルの言葉に、案内人は重い溜息をついた。

「その通りです。ですから、どうか調査をよろしくお願いします。もし手に負えるようでしたら、その場で退治をお願いします」

「分かりました。任せてください!」

フェイレイはドン、と胸を叩いた。