Faylay~しあわせの魔法

そうして、入り口付近の短い草の上に腰を下ろし、全員でお茶を飲むことになった。すっかり霧の晴れた草原には、サラサラとした心地よい風が吹く。

そこで老婆はナミと名乗り、少女はハルカと名乗った。

「ワシらの一族は元々、遊牧民のように国内を渡り歩き、人々に占いを授けておった。だから今もその名残でな」

ナミは組み立て式で移動にも便利な、まあるいテントに目を向ける。

「今は大体、一箇所に留まって占いをしています。……あんまり当たりませんけどね」

カップにお茶のおかわりを注いでまわりながら、ハルカは肩を竦める。艶やかな黒髪がサラリと揺れた。

「お前はまだ若いからねぇ。修行次第さ」

ナミがそう言うと、ハルカは口を尖らせた。

「おばあちゃんに言われたくないよ。私より当たらないのに」

ブツブツと小さく呟く声は、ナミには聞こえていないようだ。ナミは話を続ける。

「ワシらの一族は古来より占を生業とし、時には政に口添えしたこともある。かつて、あの『勇者』にも占いを授けたこともあるという。その血がお前にも流れておるのだ。もっと自信を持ちなさい」

ナミのその言葉に、フェイレイは目を見開く。

「え、勇者に? ……勇者って、この国の人!?」

「勇者は御伽噺ではなく、実在したのですか?」

『勇者』に食いついたフェイレイとヴァンガードに、ナミは得意そうに胸を張る。

「もちろん、勇者は実在した。なんせワシのご先祖様が占いを授けておるのじゃから!」

「ええ~! マジでええ~!?」

フェイレイはナミに尊敬の眼差しを向けた。