Faylay~しあわせの魔法

これをどう言い訳するかが問題だ。

「……敵討ちです」

一番低い位置から、そんな言葉が出た。ヴァンガードだ。

「僕たち、ギルドに所属していました。けれどつい先日、両親が魔物にやられて……赤い鱗のドラゴンです。そいつがこっちに逃げてきたって聞いて、ギルドを辞めて船で渡ってきたんです」

「なんと」

兵士は目を見開いた。

「そうだな、最近は魔族の増え方が激しい。そういう被害もいくつか聞いている」

「こちらでもそうなんですか」

兵士が話に乗ってきたので、ヴァンガードはこっそりと目を輝かせた。

「……あいつ、また誰かを襲うかもしれません。だから僕たち、あいつを倒したいんです。両親の仇を、討ちたいんです……」

ポロポロと水色の瞳から涙を流すヴァンガードに、ローズマリーも目を潤ませた。

「大丈夫ですよ、きっと見つかります。一緒に仇を討ちましょうね」

ヴァンガードの頭を抱え、その胸にぎゅうっと抱える。

その素晴らしいふたつの柔らかなものの間に顔面を突っ込む羽目になったヴァンガードは、ビシッと身体を固まらせたが、今この設定を壊すわけにはいかないので、そのまま大人しくしていることにした。

それを「うわぁ」と小さく声を漏らしながらフェイレイは眺める。

そしてその彼をチラリと横目で見るリディルは、やっぱり自分のささやかなふくらみに目を落とし、少しだけ眉を顰めるのだった。

幸いなことに、それが兵士には両親を憂いている姿に見え、温かい励ましの言葉と、涙まで頂戴してターミナルを出ることが出来た。