Faylay~しあわせの魔法

「あの、飛行艇から、父上と母上が落ちたとき。助けてくださって、ありがとうございました。ちゃんと、お礼、言っていなかったので……」

「うん」

リディルは頷いただけで、スタスタと薪を持って歩いていく。そんな彼女の後姿に、ヴァンガードは疑問をぶつけてみた。

「どうして、助けてくださったのですか? 貴女はあのとき、すでに限界だった。女王を召還すれば、無事では済まないと分かっていたでしょうに」

リディルは歩調を緩め、少しだけ頭を傾けた。

「どうなるかなんて、考えてなかった」

「え?」

「ただ、ヴァンの声が聞こえたから……助けなきゃって、思った」

「……それだけ、ですか?」

「うん?」

「僕の声が、聞こえたから?」

「うん」

「だって、惑星王に傷つけられて、倒れる寸前だったじゃないですか。いくら考えてなかったからって、咄嗟に他人を助けたりなんか」

「……誰かを助ける時に、そんなに色んなこと、考えてられないよ」

小屋に続く階段を数段上り、玄関フードの前に薪を置いた。

「もう少し必要かな」

そう言って薪小屋に引き返していくリディルを、慌てて追う。

「リディルさん」

追いすがっていくと、リディルはひとつ、息を吐き出した。