Faylay~しあわせの魔法

仲間たちは頂上から辺りを見回し、見える景色が一面の灰色であるのを見て、更に疲労の色を濃くした。

「もうすぐ陽が沈んじゃうんだけど、このまま降りよう。ここにいても寒いだけだし、それに向こう側の傾斜はそんなにないみたいだから」

硬い雪の上に座り込む仲間たちの顔を見渡し、フェイレイは努めて明るくそう言った。

「では、ソラスへ注ぐ魔力を多めに。ウィルダスの力はそんなに必要なくなるだろう」

オズウェルの言葉に、ビアンカとリディルが頷いた。

「大丈夫ですか?」

ローズマリーがヴァンガードの顔を覗き込む。

「はい、行けます!」

浅い呼吸を繰り返しながらも、ヴァンガードは力強く頷き、降りる準備を始める。

「強情な子ですのね。……フェイレイくんには負けたくない、みたいね?」

「うん」

ローズマリーの呟きに、リディルが小さく呟きながら横を通り過ぎる。

「……貴女も強情ね。貴女は……負担になりたくないのね」

ヴァンガードと同じく肩を上下させて苦しそうではあるのに、頑としてそれを認めようとしないリディルの後姿に、ふふ、と微笑みながら呟いてみたが、それが聞こえているのか、そうでないのか、それに対しての返事はなかった。

「まったく、この子たちは……」

仕方ないわね、と溜息をつきながらも、ローズマリーは微笑んでいる。

「んじゃー、行くよー!」

崖の手前で大きく手を振るフェイレイは、全員にそう語りかけると、また先陣を切って降りはじめた。