Faylay~しあわせの魔法

少しだけふて腐れたように唇を尖らせたが、すぐに諦めにも似た溜息をつく。

「いいんだ、馬鹿でも役に立つなら」

《そうそう。役に立つ》

《お前は馬鹿だが、前向きなところが、私たちは気に入っている》

ティナはスリスリとフェイレイの頬に頬擦りした。

「じゃあ、まあ、いっか」

ティナに気に入っていると言われ、少し気分をよくして笑うフェイレイに、リディルも微笑む。

そこへ、下の方から声が聞こえてきた。

「本当に大丈夫ですから! 気にせずに行ってください!」

「そんなに意固地にならずに。私に背負われるのがそんなに不満ですか」

「そういうわけではありませんが! でも、僕、迷惑をかけたくないんです!」

「そういうことはちゃんと出来るようになってからお言いなさい。フェイレイくんたちからどんどん置いていかれて……あら」

ヴァンガードと言い合いながら登って来ていたローズマリーが、上で待機しているフェイレイたちに気づく。

「時間がありませんわ。先に行ってくださいな!」

そう声を張り上げるローズマリーの下から、オズウェルとビアンカも登ってくる。

まだ余裕がありそうな動きから、どうやらヴァンガードのスピードに合わせているらしいことが分かった。

「ヴァン~、俺がおんぶしようかー?」

下に向かってそう叫ぶと。

「それだけは絶対に嫌です!」

何故か全力で拒否された。