Faylay~しあわせの魔法

翌日、雪女に怯えながらもしっかり睡眠を取った男性メンバーと、恋の話に華を咲かせ、一部を除いてすっきりした気分で眠りに落ちた女性メンバーは、僅かに陽の出る昼の間に登頂を開始した。

上り口はまだ氷よりも岩肌が多かったのだが、すぐに全面氷の壁と化した。

海から吹く強風で空からと地面からと雪が吹き上げ、岩肌をカチカチに凍らせているのだ。

パーティはその壁を、安全を確かめながらゆっくりと登って行く。

硬い氷壁の割れ目ににブーツにつけたアイゼンの鋭い爪を引っ掛け、両手に持ったアックスを振り、氷に突き刺す。

そうやって登っていると、風を防いでくれている土の精霊ウィルダスが、フェイレイの耳元に寄ってきた。

《速すぎると苦情が出ているぞ》

一息ついてから見下ろすと、舞う雪で白んでいる視界に、仲間たちの姿は見えなかった。

「あ、ごめん」

2時間、という限られた時間を思うとつい、自分のペースで来てしまった。

全員初心者なのだから、アイゼンの使い方に慣れていないのだ。フェイレイは早い段階でコツを掴んでしまったので、ひょいひょいと登ってきてしまったが。

みんなが登ってくるまで、しばし休む。

海の方を眺めても、吹雪いているせいで何も見えなかった。陽は出ているはずなのに薄暗く、今も光の精霊ソラスの照らす灯りがなければ、氷の割れ目も見えない状況だ。

「しっかし……俺、こんなとこ、来た覚えないんだけどな~」

アリアは、フェイレイは一度来たことがあると言っていたのだが。

防寒装備をしてもなお、身体の芯から凍りつきそうな寒さだ。こんな過酷な環境に置かれたら、少しくらい記憶に残っていそうなのだが、まったく思い出せなかった。