Faylay~しあわせの魔法

「あんまり素直じゃないと、フェイレイくんにも嫌われてしまいますよ?」

ピクリ、とリディルの肩が動いた。

「女は愛嬌、と言いますでしょ。『英雄』だなんて言われるくらいですもの。フェイレイくん、モテるのでしょう? もう少し素直にしていないと、他の誰かに奪われてしまいますよ?」

「別に私は!」

堪らず起き上がって振り返ると、ローズマリーの笑顔が目の前にあった。

「17歳で国の英雄。そんな幼馴染を持つお気持ちは?」

悪戯っぽく細められる赤い瞳に、リディルは眉を顰め、くるりと背を向けようとした。だが、ぐい、と手を引かれ、それを阻止される。

「フェイレイくん、かわいいですわよね~。掌の上で転がしたいタイプですわ」

「陛……ローズ様」

ビアンカがやんわりと嗜めるも、その顔は楽しげだ。すっかりローズマリーに感化されている。

「フェイレイくんには息子も良い影響を受けているようですし、本当に頼りになる方ですものね。皇女……ああ、いえ、リディル様が惹かれるお気持ちも分かります」

「ち、違います」

ビアンカにまでそんなこと言われ、リディルは首を横に振る。

「隠さなくても分かりますわよー。本人には内緒にしていてあげますから、ここでは思い切り胸の内をお話なさい」

しっかりと通信の断たれた通信機を見せながら、ローズマリーは笑う。楽しそうに。

外は猛吹雪、そして狭いテント内。

しっかりと両手を掴まれてしまったリディルに、逃げ場はなかった。