Faylay~しあわせの魔法

「お願い出来ますか?」

「ああ、二時間程度なら精霊を留めておける。皇女殿下にも力をお借りしたいが」

「それはたぶん大丈夫です。な?」

大きなリュックの上に置いた通信機に向かって声をかけると、「大丈夫」とリディルの声が聞こえてきた。

「だったら、ソロで登った方がいいのかな? ロープワークで時間と神経を削られるよりは、サクサク行った方が良さそうだけど」

「それがいいだろう。もし落ちても、サポートする」

「でも、女性たちに頂上まで登る体力はあるんですか?」

ヴァンガードの質問に、クスリと笑うローズマリーの声が通信機から聞こえてきた。

『私は問題ありませんわ。ヴァンくんこそ大丈夫ですの?』

「う、ぼ、僕も問題ありません」

逆に心配され、言葉を詰まらせるヴァンガード。実は少し自信がなかった。ロッククライミングならば講習は受けているが、こんな猛吹雪の中を登ったことはなかったから。

「ビアンカは私がサポートする。皇女殿下は」

「俺がサポートする。……必要ないって言われるかな?」

『必要ない』

フェイレイの思った通り、リディルからはそんな返答があった。

「……リディルさん、大丈夫なんですか?」

ヴァンガードが心配そうに眉を顰める。

『大丈夫』

また、リディルの声。

「母さんに鍛えられてるから、たぶん、大丈夫、かな?」

「そ、そうなんですか」