Faylay~しあわせの魔法

後ろを振り返ると、姿を捉えることは出来ないが、全員分の気配がちゃんとあってほっと一息つく。

前を向いてあるはずの岩壁を手探りで探していると、ぼんやりと白い光に照らされた。

振り返ると、リディルの召還した光の精霊ソラスが吹雪に黄色いドレスを靡かせ、飛ばされそうになりながら必死に身体を発光させていた。

「ありがと」

礼を言いながら窪みを探し、風を避けられそうな所に全員でテントを張る。

二つ張って、男女に分かれてテントに入ると、荷物の整理をしながら明日のクライミングについて話し合った。

「二時間で登れると思うか?」

現在、オースター島の日照時間はそれしかなかった。後は何も見えない闇に包まれる。

「どうでしょうか」

ヴァンガードは通信機から地図を広げる。

「恐らく明日も吹雪いていると思うので、頂上は見えないと思いますが……恐らく、200メートル以上はあります。傾斜は80度、頂上付近は90度らしいです。ほぼ、全行程で垂直ですね。岩壁の向こうも垂直だと考えると、2時間は無理かと」

「うーん、やっぱキツイかなー。暗いと危険だし、休めるトコあるか分かんないしなー。凍ってなかったらフリーで行けるんだけど」

「……それは、貴方以外は無理です」

ヴァンガードは声を低くし、溜息をついた。

200メートルもの高さを自分の力のみで登ることは、初心者にも等しいこのパーティメンバーでは無理だ。

そんな会話を黙って聞いていたオズウェルは、ふっと笑みを浮かべる。

「では、精霊たちの力を借りよう。まず、ウィルダスで海風を防ぎ、ソラスに光を照らしてもらう。そしてグィーネに押し上げてもらおう」