(リディル、なんて言った?)

それをしばらく考えていて、ハッとして顔を上げ、海を眺めるリディルの横顔を見た。

(自惚れか?)

自問自答してみる。

(いや、違う。今のは)

『私以外の女の人に、ああいうこと、しないでね』──それは、まったく関心のないヤツには、言わない台詞では?

「……リディル」

呼びかけても、リディルは反応しない。

ジッと暗い海を見つめる横顔に、少しだけ恥らいが見えるのは気のせいだろうか。目に『自分の都合のいいように見えるフィルター』でもかかっているのだろうか。

「リディル?」

呼びかけながら、先程自重すると言った自分の言葉をすっかり忘れ、リディルの冷たくなった頬に触れた。

ピクリ、と小さく震える肩に、フェイレイの想いが溢れ出して止まらなくなった。

出来るだけ優しく肩を掴み、自分の方へと向ける。瞳が正面からかち合った。

「リディル、俺」

そう言いかけて。

「はっくしゅん!」

思い切り、くしゃみをかました。

一瞬の沈黙の後、リディルが肩にかかっている毛布を広げる。

「……入る?」

「……うん」