Faylay~しあわせの魔法

「……なんで?」

後ろは振り返らず、自分の手の甲に視線を落としたまま、訊ねる。

「え? 何が?」

声の主であるフェイレイは、小首を傾げながらもその質問の意味を考える。

「ああ。えっと~。俺も眠れなくて起きてたんだけど。リディルが廊下に出た気配がしたから追ってきたの。そしたら結構冷えてたから、部屋から毛布持ってきた。もう大分北上してるんだろうな」

「……うん」

リディルは肩にかけられた毛布を掴むと、少しだけ振り返った。

「ありがとう」

長い睫を伏せたままそう言うリディルの瞳に涙が浮かんでいるように見えて、フェイレイはドキリとした。

やはり、過去のことで心を痛めていたのだ。

そう思うと後ろから抱きしめてやりたい衝動に駆られた。だが伸ばしかけた手は、リディルに触れることなく止まる。

そういえば今朝、不用意に触れてしまい、思い切り叩かれたばかりではないか。

また怖がらせてはいけないと、その手を引っ込めてリディルの隣に立つ。

「寒くない?」

「平気」

リディルは暗い海に視点を合わせたまま答える。どこか突っ張ったようなその横顔を見た後、フェイレイも海へ視線をやった。