Faylay~しあわせの魔法

深夜、満月に近い月に照らされる海は、思いのほか美しかった。

紺色の海に落ちる月の光は、水平線からこの船まで続く、白く輝く一本の道を創り出している。リディルは自分に向かって伸びるその白い道を、ぼんやりと眺めていた。

広い甲板上には僅かな明かりだけが灯り、見張りは立っているのだろうが、その姿を捉えることはない。

船縁に寄りかかり、静かな紺色の海を見るとはなしに見ていると。

背後に気配を感じた。

感じたけれども、そのまま動かずに横に流れていく海を見ていた。

近づいてくる気配はない。けれど、離れる気配もない。

こうして見守られていることは不快ではなく、むしろ嬉しいというか、待っていたというか。

けれども振り返ることはしない。

自分からは近づかない。

ここに出てくれば、きっと来てくれると分かっていた。そうして待っていた。それでも近づかない。

昔からそうなのだ。

傍にいてもらわなければ寂しいクセに。離れてしまうのが嫌なクセに。なのに素直に『ここにいて』と言うことが出来ない。

それを知ってか知らずか。

ずっと傍にいてくれるフェイレイに甘えている。なのに、彼の好意に応えようとは思わない。──出来ない。

何故なのか分からなかった。

自分の気持ちが理解出来なかった。

けれど、船長から過去を聞かされたとき、分かったような気がしたのだ。