Faylay~しあわせの魔法

エインズワース親子が宛がわれた部屋は、二段ベッドに簡易ベッドがひとつあるだけの、簡素な造りの部屋だった。

決して広くはないし、居心地も良くはない。

けれども真っ白で清潔なシーツの敷かれたベッドは、この船を管理する者達がいかにしっかりと生活を守っているかが窺い知れて、好感が持てた。

オズウェルとビアンカは二段ベッドの下に腰掛け、ヴァンガードは簡易ベッドに腰掛け、何を会話するでもなく、静かな時が流れていた。

この10年、ずっとすれ違っていた分、募る話もあるはずなのだが、それは言葉にならず、いつも親子の間には沈黙が訪れた。普通に会話することすら忘れてしまっているのだ。

どう息子と接していいのか。

どう両親と接していいのか。

互いに、計りかねている。

フェイレイたちがいれば、何とか言葉を繋ぐことも出来るのだが……。

それでも今までのことを思えば、こうして流れる沈黙も決して悪いものではなかった。

傍にいてくれる。

それだけで安心出来るものなのだということを、ヴァンガードは知った。

時間はあるのだ。これからゆっくりと親子の時間を取り戻していけば良い。このときまでは、そう思っていた。

「ヴァンガード」

ふいに、オズウェルが口を開いた。