Faylay~しあわせの魔法

その視線に気付いて、フェイレイはにこりと微笑み返し、どうしたの、と目で訴える。

リディルはしばらくフェイレイを見つめた後、ゆっくりと首を振り、視線を外した。

そんな彼女に、フェイレイは軽く首を傾げる。

「リディル?」

呼びかけてみたが、リディルはもう顔を上げることはなかった。

静かに席を立ち、部屋で休んでいると言い残して食堂を出て行く。

「大丈夫でしょうか……。やはり、あんな過去を聞かされた後では、色々と、考えてしまいますよね」

心配そうにそう言うヴァンガードに、フェイレイも頷く。

「そうだよな……」

リディルの失った記憶の中にある過去は、フェイレイが思っていたよりもずっと過酷だ。

やるせない気持ちを抱えていると、ブラッディに肩を叩かれた。

「いくら記憶を失くされているとはいえ、ショックだと思うんだ。俺よりもお前さんの方がリディアーナ様も気安いだろう。しばらく傍にいてやってくれ」

「うん、後で様子見に行ってみるよ。ところで、この船……」

「ああ、船のことは心配すんな。順調にオースター島に向かってるからな。このまま行けば、あと2日もあれば着く」

「そっか、ありがとう」

ブラッディに礼を言い、フェイレイは席を立った。リディルの様子を見に行くためだ。

それを見てローズマリーも立ち上がり、倣うようにオズウェルたちも立ち上がる。

それぞれに衝撃を与えた会食は、これでひとまず解散となった。