Faylay~しあわせの魔法

男性2人に諭され、ローズマリーは顔を赤らめた。

「まあ、私ったら……カインに申し訳ないことをしてしまったわ」

「笑って許してくれたんだからいいじゃねぇか。愛されてんなぁ、皇后様は!」

ゲラゲラ笑うブラッディに、ローズマリーは一瞬だけ寂しげに眉を顰めた。



その横で、リディルはそっと胸に手をあてる。

『ティターニア』

その名は、精霊士なら誰でも知っている。

フォレイス、グィーネ……数多いる精霊たち、その女王たち、その全てを束ねる精霊の女皇陛下。

ティターニアを召喚することは出来ないので、ギルドではその存在については軽く触れられただけだった。

その授業のときも感じたが。

今もその名を聞くと、リディルの胸は僅かな痛みを伴って小さく軋む。

それが何故なのか、考えてみたこともあった。

けれど、いつもその思考はすぐに閉ざされる。何かに阻まれるように。

(考えてはいけない)

無意識のうちに、そう思ってしまう。

昨日夢の中で見た、闇の中彷徨う、白くて大きな手に感じたものと似たような感覚に襲われる。

その答えに辿り着いたら、きっと。

(戻れなくなる)

リディルはそっと、フェイレイを見た。