Faylay~しあわせの魔法

そんな2人を見上げるリディアーナは、にこにこしながら、真似をしてペコペコ頭を下げる。

その愛らしさに大人たちは微笑ましく思う。

そんな、穏やかな出会いだった。



それからは、カインは月に一度はここに訪れるようになっていた。

素朴で質素な家だけれども、この家と住居者の温かな雰囲気に、カインもすぐに溶け込んだ。

シャンテルはカインが訪れると、出来る限りのもてなしをした。

田舎の郷土料理を並べ、地酒を用意し──これはクライヴに止められ、飲めずにサイラスは残念がった──どんな暮らしをしているのか、困っていることはないのか、など、カインはいつも質問攻めにした。

「何も困っていることなどありません。陛下からはたくさんのご厚情をいただいております」

カインの質問に、いつもシャンテルはそう言って穏やかに微笑む。

「しかし……皇宮にいらっしゃれば、何不自由なく暮らせるのですよ。リディアーナと一緒においでいただければいいのに。母は……もう、いないのですから」

カインの母である皇后陛下は、数年前に崩御していた。

身体が弱かった彼女は、皇后としての務めをほとんど果たせないままだった。

だからカインへの風当たりも厳しく、それを跳ね除けるために努力してきたのだ。その努力のおかげで、ここ数年は皇太子として認められてはきたけれど。

「いいえ。陛下は今でも皇后様を愛しておられます。私とのことは、ほんの一時の過ち。……お寂しい想いをしていらした陛下を惑わせた、悪い女なのですよ、私は」

「そんなことは」

カインは首を振った。

何度か訪れたが、この温かい料理と、優しい声音で語られる他愛ない話、そして何より愛らしく笑うリディアーナを見ていれば、彼女の人となりは分かるつもりだった。