Faylay~しあわせの魔法

「私は皇家に生まれ、ただ流されるままに生きてきました。このまま皇位を継いでも、そこには私の意志などないような気がして。私は本当に、この星の民を愛しているのだろうか……」

「はぁ……」

サイラスは僅か10歳の皇太子殿下が、自分よりも遥かに重い荷物を肩に背負い、深い悩みを持っていることに驚きを隠せなかった。

「私はこの世界の何も見えていない。どうしたら良いと思う? サイラス」

答えを求められて、サイラスは言葉に詰まった。

「うーん……それは俺にも分かりません。それは殿下がご自分で見つけるべきものなのでは?」

答えられないので、その答えをカイン自身に押し付けてみた。

すると、カインはしばらくサイラスを見つめた後、ぱあっと顔を輝かせた。

「そうですね。私は努力が足りませんでした。ありがとう、サイラス」

いえ、貴方は相当努力していらっしゃると思いますが。

サイラスはそう思う心を口には出さず、ただ笑みを返した。



それからカインは、皇宮から抜け出して、皇都の街や他国に出かけることが多くなった。

世界の何も見えていない。

それに対する答えが、これなのだろう。

ありのままの世界の姿を見つめ、今後の政治に生かす。カインはそう結論づけた。

周りからは「お前が余計なことを言うからだ!」と、痛い視線を浴びたが、カインの信頼を得てしまったサイラスは、護衛として各国につき合わされ、以前よりは退屈でなくなったと内心喜んでいた。