Faylay~しあわせの魔法

光の通る暗闇が、さあっと景色を変えていく。

何も見えない暗闇から、薄暗い緑の風景へ。

どこまでも続くかと思われる緑の草原に、周りを取り囲む先の尖った針葉樹林。そして、そのずっと向こうにうっすらと見える、果てなく広がる海。

菫色の空には、朝の訪れを知らせる小鳥たちが、美しい声を響かせて飛んでいった。

「……セルティア?」

しかもここは幼少の頃過ごしたフェイレイの生まれ故郷、緑豊かな小さな農村、アストラだ。

ザザザ、と草木を揺らす青嵐が運ぶ、懐かしい緑の香りに目を細め、菫色の空を見上げた。

それを徐々に海の方へと移していく。

水平線に近づくごとに、限りなく白に近い、眩しい色に染まっている。

もうすぐ夜明け。

太陽が昇る。

そう思ったら、自然と駆け出していた。

じきに輝きを放つであろう、海に向かって。そこから昇る、何者にも負けない光を放つ太陽に向かって。

きっと、そこにいるから。

フェイレイは、そこにいる。

膝まである草を掻き分けて走り、手を伸ばす。

ぐい、と誰かに強く手を引かれた。

途端に辺りは真っ白になり、再び何も見えなくなった。