「この戦い、フェイレイくんは不利ですわ」

戦況を見ながら、ローズマリーが言った。

「慣れない船の上、しかも幅３０センチの鉄骨の上。襲い掛かってくるクラーケンの足はまあ、置いといて……こんな条件下で戦ったこと、あるのかしら？」

隣でハラハラしながら見守るヴァンガードは、首を傾げるしか出来なかった。

「でも、あの船長は慣れているようよ」


ブラッディはフェイレイと剣を交えながら、襲ってくるクラーケンの足を、気配だけで斬り捨てる。

しかも、幅３０センチの鉄骨の上を、まるで陸の上を歩くように、軽やかに進んでいくのだ。


「おらぁ！」

ブラッディの剣が目にも留まらぬ速さでフェイレイの頭上に振り落とされる。

それを何とか受け止めるが、上下に揺れる鉄骨の上での戦闘は未経験のフェイレイ、力に押し負けた。

鉄骨の上に押し倒される直前で後ろに転がり、なんとか逃れる。

「まだまだぁ！」

襲い掛かってくるクラーケンの足を斬り裂きながら、ブラッディが突っ込んでくる。それを前に跳んでかわし、彼の背後に回る。

着地した瞬間に足目掛けて蹴りを繰り出したが、難なく避けられた。

立ち上がろうとしたところへ、クラーケンの足が空気を振動させながら飛んでくる。それをかわした瞬間に右足を踏み外しそうになって、バランスを崩した。

「どうしたフェイレイ！」

容赦なくブラッディの剣が襲い掛かる。