「命をかけるのか」

「船員たちの行く末を決めるんだ。船長が命をかけるのは当たり前さ。派手に行こうぜ、派手に!」

「……」

生死をかけた戦いに、フェイレイは僅かに迷いを生じた。だが。

「お前さんが勝ったら、この船と船員、全員を任せる。ただし、俺が勝ったらあいつら全員、奴隷として売り出す。いいな」

その言葉で、顔を上げた。

仲間たちの命を預かっている。半端は許されない。

「分かった」

ひょい、と女神像に飛び乗り、そこから鉄骨に飛び移った。

下を見ながら慎重に歩いていく。

海の黒と重なって、どこが鉄骨だか良く分からない。おまけに船の下にいるクラーケンのおかげで船がひどく揺れている。

そして、クラーケンの足だ。

集中力が切れたら、そこで終わる。


フェイレイが船長の目前まで来ると、船長は剣をフェイレイの目の前に突き出した。フェイレイもそれに倣い、鞘から剣を引き抜いて、船長の剣と交差させた。

「俺たちが顔を突き合せるのは、これが最後だ。名前を聞こうか、坊や」

「……フェイレイ=グリフィノー」

「フェイレイか」

船長はニイ、と唇の端を上げた。

「人に呼ばれてる名だがな。血塗れのキャプテン・ブラッディ。……いざ、参る!」


キイン、と剣がぶつかり合い、この船をかけた決闘が始まった。