Faylay~しあわせの魔法

「おい坊や。もうすぐ目的地だ。準備しときな」

船室から上がってきた船長が、コキコキと肩を鳴らしながらフェイレイに声をかける。

「船長、魔族だ!」

「ん? ああ、分かるのか、やっぱり」

「やっぱり?」

「お前さん、強そうだからな」

ニイ、と船長は唇の端を上げる。

「それより、魔族だ! 船を沈められるぞ!」

「心配はいらねぇよ。魔族ごときにこの船は沈められねぇ。それに、その魔族のいる場所が目的地だ」

「……なんだって?」

船長の言っている意味を理解する間も無く、船はゆっくりと停止した。

海賊たちは帆をたたみ、碇を下ろしている。ザン、と急に波が高くなり、船が大きく揺れた。暗い海の中で、何かが蠢いている。

「坊や、来な!」

船長に声をかけられ、一瞬ローズたちに視線をやったあと、船長の後に続いた。

「……どこで戦う気かしら」

ローズはリディルをそっと抱き起こすと、抱え上げて歩き出した。オズウェルもヴァンガードとビアンカを起こし、それに続く。


「用意出来ましたぜ、船長!」

海賊たちが舳先で声を上げている。

「ああ」

船長はそれに返事をし、フェイレイを振り返った。