Faylay~しあわせの魔法

「娘が欲しくて欲しくてたまらなかった私のもとに、川からかわいいお前が流れてきたときには、これぞまさしく天からの授かり物だと思ったよ! 神が私に言ったのだ。この娘を愛せとな!」

悦に入りながらくるりと一回転するアリアを、フェイレイとリディルは黙って見守る。

「そのかわいい娘のお前が傭兵などと危ないことをやっているなんて……すべてはこの馬鹿息子のせいだ、この馬鹿息子の!」

カツカツとフェイレイの元に勢い良く歩いていったアリアは、素早くフェイレイの背後に回りこんで、拳で両方のこめかみをグリグリとやりだした。

「あいででででで!」

「ちゃんと今回も遠くからのサポートだけにしてやっただろうな!?」

「もちろん、もちろん! 俺だってリディルに怪我させたくないから!」

「ならばいい」

アリアはフェイレイの頭を離し、リディルの元へ戻る。

「リディル、やめたくなったらいつでも言え。お前には、イケメンで好青年で高収入の男の元へ嫁がせて、楽をさせてやろうと思っているのだ。花嫁姿……綺麗だろうなぁ」

リディルの花嫁姿を思い浮かべ、白いハンカチで涙を拭い出すアリア。

そんな母に、フェイレイが怒鳴る。

「ダメだ、ダメだああああ~! リディルはどこの誰とも分からない男のところへなんかやらないぞ!」

「何だとお前、妹同然に育ったリディルの幸せを邪魔するのか!」

「リディルは俺が嫁にもらうんだ!」

「馬鹿め、寝言は寝て言え! この甲斐性なしが!」

「ひでえっ! 仮にも息子に向かって言う台詞かー!」

「お前みたいな馬鹿にかわいい娘はやらん!!」


ギャアギャアと激しく言い合う親子喧嘩を静かに眺めていたリディルは、支部長室に入ってきた背の高い男性秘書に気付き、そちらに目をやった。